第75章 折れない心
両者共に優れた才能を持ちながらも、評価されるのは安倍晴明ばかり。
内裏での方術比べの折には、彼奴はその場に現れた蛙を爆ぜさせる程の霊力を使えると話題になった。
その時、晴明は式神である十二神将の能力すら使わずに圧倒的な力量を見せつけたのだ。
他の者のみならず、見鬼の才を持つ術師であればある程、晴明の只者ならぬ気配に慄(おのの)く程である。
道満は唇を引き締めた。
この場で言葉を発しないためである。
例え、その場で気を失おうとも、ため息一つで其方は?と矛先が向けば俺には……
それからは一層厳しい修行を自らに課した。
晴明と肩を並べるには彼の式神である十二神将にも匹敵する神や精霊を配下に迎えること。
付喪神(つくもがみ)ならいざ知らず、神に近しいとなれば京の都の霊峰と名高い貴船にも赴いた。
此方に御座(おわ)す龍神こそ高龗神(たかおかみのかみ)である。