第74章 誰がために…
「要するに安倍晴明はあんたにとっちゃ目の上のたん瘤(こぶ)だったってことだろう?」
その通りだ。
あの男は目障りだった。
化け物の血を継いでいるくせにも関わらず、左大臣から重用されていた。
どんなに努力をしようとも、安倍晴明の名は都に轟いていて……
方術比べでも他の追随を許さず、神の末席に連なる十二神将ですらも使役した。
道満が唇を引き結び、拳を握りしめる。
宇髄はその様子を具(つぶさ)に観察していた。
成程、やはりこの蘆屋道満という古代の術士は安倍晴明との間にいざこざが生じていたのだろう。
隙となるのは、その一点だけなのだろうか。
宇髄はちらりと視線だけで周囲を見回した。