第74章 誰がために…
陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)にのっとるならば、柱の九人が五行(木、火、土、金、水)の性質に当てはまる。
陰が(月)、陽が(太陽)であるならば。
鬼(陰)を配下とする道満が最も苦手とする剣士は陽。即(すなわ)ち(日の呼吸)の使い手。
だから縁壱様しか決定打を与えられなかったのだ。
とはいえ、この事実に気づいたのは白藤のみ。
誰かに伝えなければ……
この場にいて日の呼吸を扱える剣士はただ一人。
竈門炭治郎。
日の呼吸でなくとも赫刀(かくとう)を手に出来れば……
でも、刀身を赤くするのにもそれぞれ技量がいる。
それにこの場には蟲柱が不在。
仮に炭治郎を含めたとしても……
諦めかけたその時。
「焦んなよ」
「宇髄様……」
「気配が近くなってきたからな、もう少しで柱が全員揃いぶみだ」
周囲の音は無限城の崩落の音で掻き消されている。
そんな中でも、宇髄の言葉であればすんなりと信用出来てしまうことを不思議に思う。