第74章 誰がために…
彼女は俺にとって、大切な存在だ。
根無し草のように、ただその日をやり過ごすだけの日々を送っていた俺に……
蔦子姉さんを守れなかった俺に。
共に戦っていた親友でさえ守れなかった俺に。
希望(ひかり)をくれた。
生きる理由をくれた。
これから先の未来も、共に在りたいと願う程に。
想いも身体も溶け合う様に。
だから、彼女を護る。
俺が今、持ちうる全ての力で。
「ーーー」
ーー心を鎮(しずめ)ろ。
荒波を立てず、凪の上に立つようにーー
ザシュッ。
突如、道満の腕から血飛沫が上がる。
何だ?
気配が感じられなかった。
何故、斬られた?
何処からの斬撃だった?