第74章 誰がために…
鬼舞辻へかけた暗示が歪み始めている。
道満は内心で舌打ちをする。
今、鬼舞辻を殺させてはならない。
真の『鬼』を目覚めさせる為に。
鬼舞辻は所詮、傀儡(かいらい)でしかないのだ。
私は蘆屋道満。
幾星霜を生き抜いてきた、法術使い。
私の配下には、より強い者を配さなければならない。
何故ならば、私こそがこの国を『統べる者』になるからだ。
今ここに、憎き安倍晴明は居ない。
鬼舞辻を仕留め損なったあの忌まわしい剣士も居ない。
柱とやらがいくら束になろうとて、所詮は人だ。
どうとでも出来る。
たとえ死した人間でも、使い道がある。
私にかかれば、死霊も鬼も、同列だ。
神でさえも使役する力を有しているのだから。
故に、恐れるものは何も無い。