第74章 誰がために…
私の体はもう、そう長くは持たない。
わかるのだ。
咳が重くなってきていることを。
熱がなかなか下がらず、体力が落ちていくことも。
これではまるで自分は彼女の足枷でしかないでは無いか。
私がたとえ、あと数年生きながらえたとしても、彼女を……
「お兄様、お加減如何(いかが)ですか?」
水桶を私の寝ている褥(しとね)の枕元に置き、私の額に彼女の手が触れる。
「まだ少し熱いようですね……」
「白藤の手は心地よいな……」
「ふふ、お兄様ったら……」
擽(くすぐ)ったそうに笑う君が。
君のことが。
たまらなく、くるおしいほどに……
欲しくてたまらないのだ。
何と浅ましいのだろう。
足枷でも、それでも、其方の横に在(あ)りたいと。
「白藤……」