第74章 誰がために…
それほどに相手が油断ならない者だと、ピリつく肌で感じ取る。
「蘆屋道満。鬼殺隊は貴様のような痴(し)れ者に屈しはしない」
いつになく強い口調で言葉を紡ぐ白藤に対して。
「何と世迷言を。其方らが今から倒す相手は鬼の始祖、鬼舞辻無惨であろう」
口許だけの笑顔を浮かべる蘆屋道満の睨み合い。
口端を持ち上げて笑う男の所作が、美しいはずなのに作り物めいているのは、やはり中身と釣り合っていないからなのだろう。
誰もが予想だにしない男の登場で、その場の者達が
一同に動きを止め、思考に迷いが生じた。
蘆屋道満はそれにつけ込むことにした。
「私が其方の言う蘆屋道満という男だという証拠がどこにあるのだ」
からかい気味に尋ねる蘆屋道満に。
「姿形を変えられるのは鬼のみ。逆を返せばそれ以外は全て人間。ということでしょう?」
「成程。どうにも……知恵がついたようだな。小娘風情が……」