第74章 誰がために…
「蘆屋、道……満……?」
何だ?
こんな男は知らぬ筈。
だが、何故こんなにも既視感があるのだろう。
無惨は自身と同じ顔の男を眺め、観察する。
男の仕草、雰囲気、独特な存在感。
「何を放けている。鬼舞辻無惨。貴様は鬼の始祖だろう。人間相手に遅れをとるな」
この男に指示される謂れは無い。
己こそが鬼の始祖。
鬼舞辻無惨なのだから。
「その者の言葉を聞いてはなりません!」
焦る白藤に道満が声をかける。
「相変わらず、小賢しい娘だな。白藤。また一から教育し直してやろうか……」
いつの間にこちらに来た!?
明らかに人の範疇(はんちゅう)を超えた動きに冨岡も狼狽(ろうばい)する。
背後を取られた事など、柱になってからは久しく無かったことだ。