第74章 誰がために…
でも。
「炭治郎君」
これ以上、彼女に負担をかけたくないのに。
縋ってしまう。
託してしまう。
彼女に……
「その方は私が治します」
貴方はいつもそうだ。
でも、今彼女の負担を増やす訳にはいかない。
「白藤」
冨岡さん。
そうだ、冨岡さんなら彼女を止めてくれる。
「任せる」
「えっ?」
「だから、お前は前に出るな」
それを聞いて炭治郎もハッとする。
そうか。
彼女が必要以上に前に出ないように、冨岡さんは。
あぁ、届かない。
その信頼に俺の手はまだ届かない。
もどかしい。
でも、そこにいる。
消化できない思いはまだ胸の内でいい。
今はこの戦いに集中する。
彼女に思いの丈を伝えるのは、それが終わってからでいい。
炭治郎は再度気を引きしめる。
俺は頼りない、情けない。
でも、強くなる。
彼女の笑顔を向けてもらえるように。