第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
蘆屋道満は鳥の式を通じ、舞山をつぶさに監視していた。
この男は放っておけば、そのまま鬼となるだろう。
さて、この娘をどうしようか。
道満は口許に手を当て、しばし思案する。
この娘、薬師の薬で体に変調があったと聞いていたが、目覚しく変わったのは髪の色だけで、他は特段そこいらの女性と変わりは無い。
道満の師匠が囲っていた女性よりも、この娘は若く美しい。
檻に閉じ込めた白藤の顔を道満はしげしげと見つめる。
若く張りのある肌。
色が抜けてしまってはいるがたおやかな髪。
顔つきも少女から女性に変わる頃というか……
情を通じれば、花咲く個体かも知れぬ……
道満は白藤にとある薬を服用させた。
この顔が朱に染まる様を見てみたい。
あぁ、そうだ。
いっそ、このままあの男の元へ返そう。
そうすればきっと、あの男は鬼となる。
この娘も、もしかすれば……
面白いものが見られそうだ。
道満は袖の下で含み笑いをした。