第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
それを、阻む者を私は許さない。
「産屋敷殿?」
ドス。
鈍い音がした後に、引き抜かれた刃によって血が吹き出した。
ブシャ。
「がっ、はっ……」
「白藤を返せ……」
何なのだ?
様子がおかしい。
正気の沙汰では無い。
おかしい。
だが、疑問は声にならない。
腹を斬られ、呼吸が上手くできない。
息をするだけで血が滴り落ちていく。
ポタ、ポタ。
「ふー、ふー」
薬師が息を調えようとしたその時。
再び、舞山が動いた。
彼は包丁に滴っていた薬師の血を舐めたのだ。
あぁ、コレだ。
私の『渇き』を満たすものは。