第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
死した魂や物の怪さえ操る程の霊力と、混沌入り交じる朝廷へと意見する胆力。
陰陽師。
道長の近くにいる青年が恐らく安倍晴明だろう。
蘆屋道満は何処だ?
官吏達が短冊を手にし、歌合わせ(短歌作り)をしようと話し合う中、舞山は烏帽子を被った陰陽師達に目を向ける。
安倍晴明のやや後方にいる男性が陰陽頭(管理職)の賀茂保憲。
保憲の父である賀茂忠行が安倍晴明の師であることから、あの二人は親しい間柄なのだろう。
「もし」
無惨は手近にいた陰陽生(雑用係)に声をかけた。
「蘆屋道満殿はどちらに居られる?」
「道摩法師ならあちらに」
「道摩法師?」
「道満殿がそう呼ぶようにと。道摩法師にご用でしょうか?」
「ええ。私用でお話を」
「では、お声かけいたしますのでお待ちください」
陰陽生は一人の青年に声をかけた。
ああ、あれが蘆屋道満か。