第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
播磨国から京の都へと渡ってきた蘆屋道満。
霊力も高いが、彼の地では人々を彼の作る妙薬で健康になったという者も居たと聞き及び、舞山は彼に白藤を診てもらうことは出来ないだろうかと思案にくれた。
元の明るい彼女に戻って欲しい。
舞山の願いはそれだけだった。
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数日後。
朝廷の官吏達が集まる宴に舞山も招待されることになった。
その警備に腕利きの陰陽師が数名招かれることになっている。
警備など、検非違使に任せておけば良いものを。
結局、陰陽師を招くのは官吏達が呪術や呪いを畏れているからだ。
人は誰かと競い合い、相手を蹴落として先へ行く。
蹴落とされた方は、蹴落とした側を憎む。
そして怨む。
そういった感情は『呪』としてその場に留まる。
呪を向けられた側はその場の暗澹さに疲弊し、体調を崩すと言われている。
その呪を操り、祓い、清めることが出来るのが陰陽師。