第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
「私に殺されることは大災に遭ったのと同じだと思え。何も難しく考える必要はない。雨風が、山の噴火が、大地の揺れがどれだけ人を殺そうとも、天変地異に復讐しようという者はいない」
無惨の口から紡がれる言葉にふつふつと怒りが込み上げてくる。
「死んだ人間が生き返ることはないのだ。いつまでもそんなことに拘っていないで、日銭を稼いで静かに暮らせば良いだろう。殆どの人間がそうしている。何故、お前たちはそうしない?」
鬼舞辻無惨。
この鬼の始祖とは絶対に。
分かり合うことは出来ないのだろう。
「鬼狩りは異常者の集まりだ。私はもう異常者の相手は疲れた。いい加減終わりにしたいのは私の方だ」
「無惨。お前は、存在してはいけない生き物だ」
生き物に対してこれ程に冷たい気持ちになったのは、俺も初めてだ。
鬼舞辻無惨………
鬼殺隊一同とは裏腹に。
白藤は言い得も知れない感情を抱えていた。
何故だか、この声に聞き覚えがあるからだ。