第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
この戦いが終われば、白藤さんへの想いに整理がつくかもしれない。
一度火がついてしまった想いはそう簡単に消せない。
嫌でも思い出してしまう数々の情景をガシガシと頭を掻いて忘れようとする。
今はまだ、いいんだ。
俺は………
炭治郎が思考を整理している間、白藤は珠世に自分の血を飲ませようとしていた。
「珠世様……」
「白藤さん……私に、構わず……」
「駄目です、貴方はこの先も必要な方です……さぁ、私の血をお飲み下さい」
白藤が珠代の口に自らの血を流し込む。
ゴクン。
珠世の喉が嚥下するのを見届けて白藤はほっと息をつく。
どうにか肉体の崩壊は止まったようだ。
私の血でどこまで回復が見込めるか分からないが、今珠世に死なれては困る。
今まさに無惨の最後の配下となった鳴女と愈史郎が戦っているのだ。
鳴女の体を通して無惨の細胞が愈史郎を侵食しようとしている。
細部までは見えないが、苦戦しているのだろう。
何とか時間を稼がねば。