第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
「……………」
言葉が出なかった。
何て声をかけたらいいのか、分からなかったから。
「白藤………」
そうだ。
白藤さんを止められるのは冨岡さんだけ。
「冨岡さん……」
「すまない、任せていいか白藤」
「はい」
「え?」
炭治郎は驚いた。
冨岡さんは白藤さんを止めに来た訳じゃなかったのか?
「だから、お前はそのまま前に出るな」
そう言って冨岡は刀を構えた。
そうして炭治郎も気配を察知した。
無惨の鞭のような腕を冨岡が打ち潮で勢いを相殺した。
すごい。
あ、でも、そうか。
冨岡さんは白藤さんが必要以上前に出ないようにしているんだ。
「炭治郎、動けるか?」
義勇さん、貴方はずるい。
「炭治郎?」
勝てる訳ない。
「はい!!」
でも。
この想いは消せない。