第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
予想外の動きに皆呆然としていたが、輝利哉だけは微かに漏れ聞こえた父の意志に沿うように、禰󠄀豆子をそのまま送り出した。
カナヲはまさか本当に禰豆子が出てくるとは思っていなかったので、本当に驚いたが、着いてきてと元来た道を急ぐのであった。
良かった、間に合った。
あとは、向こうに戻るだけ。
カナヲは再び走る速度を上げる。
後ろは振り返らない。
だって彼女は知っているから。
禰󠄀豆子が炭治郎と闘っていたという事実を聞いたことがあるから。
だから信じている。
禰󠄀豆子はちゃんと後を着いてくると。
そう、信頼している。
師範が彼女を呼ぶのは禰󠄀豆子なら、きっと何かが出来るからなんだ。
だから連れていく。
皆はきっと無惨の近くに居るはずだから。
急げ。
役に立つんだ。