第73章 弦音に捕らわれぬ事勿れ
無惨の姿が確認できる距離に八人の柱と白藤、炭治郎、玄弥が集まった。
首を掴まれ、ボロボロと肉体が崩れていく珠世を無惨から引き剥がすべく周囲を取り囲もうとした時だ。
異変に気付いた宇髄が無惨を注視する。
いや、音を知覚する彼だからこそ気づけたと言うべきか。
無惨の動きがおかしい。
鬼殺隊士の肉を食って体を再生したと輝利哉様から報告を受けていたが。
ただ単に見た目が変わっただけじゃねぇのかよ?
違和感の正体は分からない。
だが、宇髄は無惨が弱体化しているのではないかと考える。
珠代が言っていた毒や上弦の鬼たちの討伐。
柱が欠けずにここまでやってくるのは無惨にとっては想定外だったはず。
もし、俺だったら、どうする?
普通に考えれば逃げればいいだけのこと。
そうか。
無惨なら逃げられない訳じゃない。
すぐに逃げないのは何かあるんだ。
何か…………