第72章 邂逅、別離
水の中に意識が沈んでいくような感覚に囚われて。
俺は意識を手放した。
「ん………」
目覚めた俺は白藤を探そうと体を起こした。
はずだった。
ゴロン。
「痛っ……」
「………様!!」
「白藤?」
「頭に沢山草が付いていらっしゃいますよ?またいつもの場所で寝そべっていらしたのですか?」
いつもの場所?
白藤が言わんとしている場所の見当が付かず、返答に窮していると、そこに一人の剣士が現れた。
「白藤」
「巌勝様!!」
自分以外にも数人が巌勝と呼ばれた青年の近くに集まる。
稽古をつけて欲しい。
というのが、殆どだった。
「瀧上もどうだ?」
「瀧上?」
誰のことだ?
「頭でもぶつけられたのですか?瀧上様」
心配そうな白藤の顔を見て、冨岡は違和感に気づく。
そうだ。
巌勝はさっきの鬼の名だ。
であれば、俺は今……
瀧上という名の剣士という訳か。