第72章 邂逅、別離
時透は意を決し、黒死牟との距離を詰める。
時透の顔に痣が浮き出る。
この痣の力を使って、この鬼を食い止める。
「霞の呼吸 陸ノ型 月の霞消 改『熾突(しとつ)』」
時透は本物の霞のように黒死牟の懐に入り込み、そうして、自身の刀を黒死牟の左下腹に突き立てた。
時透は黒死牟を逃がすまいと力を込める。
それが、刀にも伝わったのか、時透の日輪刀の刀身が赫く染まり始める。
何故だ?
動けぬ……
それどころか、灼け付くような痛みがジワジワと広がっていく。
時透が作り出した好機に、いち早く反応した玄弥は黒死牟に南蛮銃を向ける。
『撃っていいから』
やる、やらなきゃ駄目なんだ。
「ああああ……」
玄弥が南蛮銃を構え、撃つ。
ガン!
ガガガガガ!!
刀で押し返したにも拘わらず、体にめり込んできた銃弾。
だが、一発目は銃弾ではなく、悲鳴嶼の数珠玉。
一瞥(いちべつ)すれば悲鳴嶼にも痣が浮き出ている。