第72章 邂逅、別離
何だ?
予想外の事が起きた。
黒死牟は困惑する。
赫い刀、痣者。
継国の末裔が刀を赫くし、岩の男は俺の視界を謀(たばか)った。
もしかしなくとも、視えているのか。
無意識下のこの視界が。
何もかもが透き通る、この世界が。
ズズズズズ。
今度は何だ?
打ち込まれた銃弾が、形を変えていく。
これは、彼奴(きゃつ)の血鬼術か?
まるで樹木のように銃弾が私の身体をそこへと縛り付ける。
まるで磔(はりつけ)のようになった俺の身体を鬼狩り共が狙い、技を放つ。
左腕は岩の男の鉄球に砕かれた。
何故だ。
何故、日の呼吸を使えないただの俗物共にここまで追い詰められるのだ。
鳩尾(みぞおち)から旋毛(つむじ)まで突き抜けるような焦燥。
生命が脅かされ、体の芯から凍りついていく。
忌むべき、そして懐かしき感覚。
これこそが、四百年振りの『死の恐怖』。