第72章 邂逅、別離
一方で、悲鳴嶼は考えていた。
技が尽きない。
あの鬼はいくつ型を持っているんだ?
おかしい、早すぎる。
技を出そうと考えた瞬間を読まれている。
おかしい。
神通力でも使っているのか?
この鬼には何が見えている?
感覚を研ぎ澄ませ。
この見えぬ目は本質を見抜く目。
決して惑わされない。
極限まで刮目しろ!!
そうして、悲鳴嶼の視界に視えた。
透き通る世界。
分かる、あの鬼の息遣いも、筋肉の脈動も。
悲鳴嶼の視覚が覚醒した時、時透の視界も覚醒した。
走れ、走れ、走れ。
死ぬなら役に立ってから、死ぬんだ。
幸い、斬られた腕が元に戻った。
代わりに右手に出ていた藤の花の紋様が消えた。
きっとあれは白藤さんの血鬼術だったんだ。
次に直撃すれば死ぬだろう。
でも、それでも、今動かなければ。