第72章 邂逅、別離
不死川が黒死牟に狙いを定め、技を放とうとした。
「月の呼吸 捌ノ型 月龍輪尾」
ザンっ
「着物を裂かれた程度では……赤子でも死なぬ……」
「っ……化け物がァ……」
不死川が低く唸る。
水の包囲を抜けてくるとは。
不死川同様、悲鳴嶼、冨岡にも緊張が走る。
「どうやら伏兵が居たようだな……」
黒死牟の三対の双眸が冨岡へと向けられる。
柱としての実力は風と岩の方が上であろう。
だが、水は柔軟性のある呼吸。
この男も、一筋縄ではいかないか。
黒死牟が束の間、冨岡に視線を向けている中、玄弥は床に散らばっていた黒死牟の髪を手に入れていた。
これを喰えば、もっと力をつけられるはずだ。
玄弥は今度は躊躇(ためら)いなく、黒死牟の髪を飲み込んだ。
ドクン。
体が変化していくのが分かる。
右手に握りしめていた南蛮銃が、俺の手と一体化している。
さっき飲み込んだ刀と髪の影響か、南蛮銃には黒死牟の刀同様に目玉のような文様が浮き出ている。
「玄弥」
「時透様……」
「時透で構わないよ。玄弥。何とかして俺が黒死牟の動きを止めるから、その銃で俺ごと黒死牟を撃って……」