第72章 邂逅、別離
「今だ、冨岡ァ!!」
不死川の声で我に返った白藤は先程同様、戦いを注視する。
「水の呼吸 拾ノ型 生生流転」
現れ出(いで)た水龍は炭治郎のものよりも数段雄々しく大きく畝(うね)りながら、黒死牟に迫る。
強力な顎(あぎと)に着物を引き裂かれる黒死牟だったが、彼もまた刀の形状を変化させ、水龍を押し戻さんとばかりに斬撃を繰り出す。
「月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮」
神話に時代に語り継がれた武具のように特殊な形状へと変貌を遂げたその刀を、黒死牟は自在に操る。
襲い来る風を薙ぎ払い、視界を遮る霞すらも防がれる。
悲鳴嶼の操る鉄球の動きにも反応するようになってきた黒死牟。
もはや、打つ手はないのかもしれない。
諦めかけたその時、冨岡が水龍諸共に黒死牟を渦に巻き込んだ。
「水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦・流流!!」
「くっ!!」
さしもの黒死牟も渦の中では動きを止めた。
反撃するなら今だ。