第72章 邂逅、別離
「ご武運を」
「はい。ちょっと行ってきます。待ってて下さい」
少しぎこちない、だが、明るい声音で白藤に返事をしてから玄弥は黒死牟の元へ向かった。
男性陣が戦っている。
この時ほど、自身が非力なのを痛感する白藤である。
もどかしい。
だからせめて、この術で少しでも彼らの傷を癒し、戦いに専念できるよう、力を尽くそう。
たとえそれが、私にとっての諸刃の剣だろうとも。
「義勇さん……」
誰もこの戦いで命を落とすことが無いように。
ギュッと握りしめた拳を胸に当てる。
大丈夫。
何があっても私が皆を守る。
この術が、彼らを救ってくれるはずだ。
だから、大丈夫。
この戦いを乗り越えて、無惨を………
あれ?
無、惨?
どこかで聞いたことがあるような……
『お兄様』
『お前は私の自慢の女房だよ』
脳裏に霞む人影。
ハッキリとした全容の見えない姿だが、何か気になる。
この人は、誰……?