第72章 邂逅、別離
「囮役が俺に務まりますか?」
「寧ろ貴方にしか頼めないのです」
「どういう……?」
「今の玄弥君なら私たち鬼と同じように体の再生が使えるかもしれません。人間の身体では修復できない怪我も今の貴方なら……」
「…………」
「私は戦いの中では何も出来ません。だから誰かに託すことしか出来ない。お願いです、玄弥君。黒死牟の刀を止めてください」
これで、兄貴の役に、立てる……?
「……玄弥君」
「俺、やります」
「一番危険ですよ」
「大丈夫。今の俺なら白藤さんより強い鬼かもしれませんよ」
「………そうですね」
「白藤さん。そんな顔しないで下さいよ」
うまく笑顔を作れない私に、玄弥が呟いた。
「ちゃんと生き抜く。誰も、傷つかないように」
「………分かりました」
玄弥の手を握り、念を込める。