第72章 邂逅、別離
「っ……」
白藤の顔が痛みに歪む。
それでも、声を殆ど発さないのは玄弥の心情を慮(おもんぱか)ってのことだろう。
鬼化を中和させる効果の望める部分と考えた時に思いついたのが、白藤自身の血液。
とはいえ、血液は直接飲ませることは基本困難である。
故に、噛みつかせた。
腕ならば再生は容易だからだ。
痛みは別として。
噛み付いたまま、血を吸われている。
……出来れば、一気に噛み砕いて欲しかったが……
痛みが走る片腕。
痺れがまわり始めるも、歯を食いしばって耐える。
戦闘中の彼らにも白藤の血の匂いが漂ってきた。
珠代の魔香に近いその香りは、藤の花の匂いによく似ているもの。
いち早く反応したのはやはり冨岡だった。
「白藤!!」
冨岡の反応を見て、他の柱達も一瞬意識が黒死牟から逸れた。