第72章 邂逅、別離
闘いの事象を水面に浮かぶ波紋に置き換えて考える。
敵の間合いの内側で、微かに鈍る場所を探る。
だが、激戦を潜り抜けてきたのであろう黒死牟の隙はなかなか見いだせない。
いや、ある。
日輪刀であったはずの刀を握る手首の周りだけは守りが薄いような気がする。
たとえ、こちらを誘い込む罠だとしても、攻撃のきっかけを掴むためならば、攻め込むべきだ。
冨岡は深く息を吸い、狙いを定める。
不死川も同様だ。
互いに視線を交えると二人は同時に駆け出した。
不死川は黒死牟の左手側から。
冨岡は黒死牟の右手側から。
お互いに技を出し合う。
「風の呼吸 肆ノ型 昇上砂塵嵐!!」
爆風にも引けを取らない不死川の風が吹き荒れる。
冨岡は黒死牟に気配を辿られぬように、動き回る型を選んだ。
「水の呼吸 玖ノ型 水流飛沫 乱!!」
二人が変則的な型を使用し、黒死牟の技を封じる。