第72章 邂逅、別離
さっきまで不死川と二人でこそこそとやり取りをしていたと思えば、次は鬼ですらも白藤の名を呼ぶとは……
いや、あの鬼が白藤の思い人だったことは彼女本人から聞いていたが、彼女の目の前で。
この鬼を打ち倒してしまっていいものか……
冨岡は迷っていた。
「戦いの最中に考え事か?そのような迷いの多い者に柱が務まるのか?ぬるい……」
確かになァ。
黒死牟の言うことにも理解できる。
「冨岡ァ、今は任務に集中しろォ……」
「あぁ……」
とは言ったものの……
パシン!
白藤に頬を打(ぶ)たれた。
「………白藤?」
「しっかりして下さいませ。私のことを思ってくれているのなら、勝って下さいませ」
「白藤……」