第72章 邂逅、別離
思い出した。
彼女は、あの時の……
彼女のことを俺はあの頃、白く儚い雪のようだと思っていた。
思い出して頂けた?
「巌勝、様?」
何故、鬼に……
「久しいな。白藤。まだ鬼狩りに奉仕しているのか?」
「…………はい。あの頃から私は変わっておりません」
「そうか」
「鬼狩りが鬼になるなんざ、論外だろォが!!」
ギィン!!
鍔(つば)迫り合いになるも、やはり数百年を越えた鬼。
長くは持たない。
だが、今は白藤に意識が向いているようだ。
この隙に攻撃を畳み掛けて、倒すしか、勝機は無いだろう。
大方の柱は不死川の考えと同じようで、黒死牟に攻撃を繰り出していく。
「霞の呼吸 参ノ型 霞散の飛沫!!」
「岩の呼吸 伍ノ型 瓦輪刑部!!」
動かないのは冨岡だけ。
何してやがる、あの野郎……
冨岡は戦いの最中とはいえ、思考の渦に囚われていた。