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鬼滅の刃R18 藤の花嫁

第72章 邂逅、別離


「藤姫……」

彼女はあの日から抜け殻になってしまった。

いや、以前の彼女に戻ったというべきか。

表情が無く、口元だけに笑みを浮かべる彼女。

精彩を無くした瞳はいっそ未亡人のようにさえ見える。

「縁壱様?」

「すまない。隣りは空いているか?」

「えぇ、どうぞ」

藤の屋敷の離れの縁側に腰掛け、月を眺める彼女の隣りに腰を下ろす。

「月は美しいですね。私は陽の光を浴びられないので、月は私の中では太陽の代わりです」

それを聞いて、あぁと納得した。

そうか。

彼女にとっての兄上は、太陽だったのだ。

だが、彼女を照らしてくれる月はもう居ない。

「兄上のこと、すまない……」

縁壱は頭(こうべ)を下げた。

「いいえ、縁壱様。頭をお上げ下さい」

「…………」

「貴方の顔をよく見せて下さい……」

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