第72章 邂逅、別離
「巌勝様。お早いお戻りを」
「あぁ。明日には戻る」
「はい」
彼女が人だったならば、あるいは……
いや、種族が違えども、想いが通じ合うなら……
目を閉じ、縁壱は強く願う。
巌勝と彼女にどうか幸あれと。
だが、その願いは、ある夜から断ち切られてしまう。
「あの、縁壱様。巌勝様がまだ戻られないのですが……何か知らせは……」
「すまない。俺も分からない……」
兄上、どこに居られるのですか。
彼女を置いてけぼりにするような男ではなかったではないか。
縁壱は必死に兄を探した。
東へ、西へ。
任務を遂行しながらも、巌勝を探し続けた。
「兄上………」
数日後。
御館様が殺された。
鬼の襲撃とされていたが俺には分かる。
あの傷口の裂け目は恐らく、兄上の斬撃によるもの。
俺はいつか、兄上と殺し合わなければいけないとその時、悟ったのだ。