第72章 邂逅、別離
「お二人と懇意にされていて、しっかりお話出来る方は煉獄様くらいでしょう?」
彼女に言われてはたと気づく。
確かに。
兄上も自分も他者とあまり話して関わらない。
たまに指南してくれと、せがまれる時に話すくらいだな。
風と水は特に剣に熱心だから、しょうがないのかもしれないが。
「煉獄様は私にも物怖じせずに話してくれますし」
「物怖じ……?」
それは少し違う。
柱は皆、回復の為に彼女と閨を共にしている。
女性経験の少ない者は、特に彼女の艶(あで)やかな色香にあてられてしまうようで。
彼女の顔を見ると閨を思い出してしまい、まともに顔を合わせられないという者が多い事に気付いていないのだ。
我々兄弟は一時妻が居た身であるから、差程彼女をそういった視点で見ている事が少ないのでは無いだろうか。
にしても、この二人……
どう見ても、仲睦まじいと思われるのだが……
兄上は彼女のことをどう思っているのだろうか?