第72章 邂逅、別離
「兄上」
「何だ?」
「いつか一緒に……」
「すまない、聞こえなんだ……」
「いえ……何でもないです」
何となく気まずい兄弟を見て、白藤が縁壱に耳打ちする。
「以前より、二人でお話出来るようになりましたね」
そう言って彼女が嬉しそうに笑う。
まるで自分のことのように。
以前、俺が好いた娘はもっところころと表情の変わる人だったが。
藤姫もいつかそうなるだろうか?
彼女の表情の機微は分かりずらい。
だが、兄上と居る時は、少しだけ柔らかい雰囲気がするのだ。
「縁壱様?」
「あぁ、すまない。聞いていなかった」
「縁壱……」
「巌勝様。眉間に皺を寄せてはいけませんよ?本当に皺が付いてしまいますからね?」
「変なことを言うな」
「えぇー。あ、なら煉獄様をお呼びしますよ?」
「何故(なにゆえ)煉獄なんだ………」