第72章 邂逅、別離
彼女が兄上の心の穴を塞いでくれたなら。
きっと、二人は……
互いに思いあっているだろう。
俺が口を出して何かが変わるならそうしてやりたいのもやぶさかでは無いが……
兄上は………
今は俺への劣等感でいっぱいなのだろう……
俺が、兄上の前から居なくなればあるいは……
だが………
今の鬼殺隊の戦力と数えられている俺は御館様からの頼みで動けない。
「縁壱様。出来上がりましたよ」
「早いな」
「私の数少ない取り柄ですから」
取り柄……
彼女の美徳は、もっと他にもあるというのに……
彼女は出時の変わった鬼である。
「縁壱様?私の顔に何か付いてますか?」
「…………いや。すまない」
「縁壱。あまり白藤を困らせるな」
「兄上、すみません」
「巌勝様。私は気にしておりませんので」
困ったように、でもほんの少しだけ、笑みを唇に乗せる彼女は幸せそうに見えた。