第72章 邂逅、別離
「藤姫があやつを知っている以上、あやつが当時鬼殺隊にいた事は事実だという事だ……」
「じゃあ、時透様の事も……」
「事実なのだろうな。御館様のように、一族から鬼を出しているのだろう。ただ、『継国』が一度滅んでいるからこそ、呪いにかからなかったのかもしれん……」
「………」
『この傷はね、行冥。一族がかけられている呪いなんだよ』
昔、御館様から聞いたことがある。
何かの折に悲鳴嶼が尋ねたのだ。
どこか具合がよろしくないのかと。
そうして御館様が答えた。
呪いの事を聞いたのはその一度きりだったが、悲鳴嶼はその日のことをよく覚えている。
あの不思議な声音で隠されてしまう御館様の胸の内。
目の見えぬ悲鳴嶼にさえ、伝わってきた悲しみに似た感情を。