第71章 残荷、陽炎
白い雪の妖精のような女性だ。
恋雪は狛治に抱えられたまま、その女性を眺めていた。
彼女は狛治の言葉を聞いて恋雪に目線を移した。
藤色の瞳が自分へ向けられる。
不思議な感じがした。
初めて会ったはずの彼女に既視感のような物があったからだ。
彼女はゆっくり首を左右に振る。
あぁ、私はやはり助からないのだ。
『不殺の御子』という特別な存在にさえ、匙を投げられてしまった。
ごめんなさい、狛治さん。
ここまで沢山走ってくれたのに。
ごめんなさい、狛治さん。
貴方に私の最後を見せてしまって。
ごめんなさい、狛治さん。
貴方に絶望を与えてしまうことを、どうか許して。