第71章 残荷、陽炎
「どうされましたか?」
家人が狛治に声を掛ける。
「助けて下さい!『不殺の御子』はどちらですか?」
「『不殺の御子』……どちらでその噂を?」
「そんな事はどうでもいい!まだ息がある今なら!どうか、お救い下さい!!」
「その娘さんはどこかを刺されたり、怪我で血を吐かれたのですか?」
「毒です!毒を飲まされました!」
「…………そうですか。それならば、申し訳ありませんが、私にお救いする術はございません。医者を手配します」
家人と思っていた女性は噂の『不殺の御子』だと知り、狛治は彼女に縋るように助けを乞う。
「何故ですか!!御子様!!」
「私が治せるのは傷だけです。どのような噂が広まっているかは分かりませんが病や毒を治すことは、私には出来ません………」
「……………そんな」
「申し訳ありません……」
そうだ、あの日。
頭を下げた女性が白藤だったことを思い出した。