第71章 残荷、陽炎
見極めろ。
そして、掴み取れ。
あれ?
何だろう。
視界が変わって見える。
これは何だ?
ドクン。
炭治郎の視界は初めてその映像を映し出した。
闘いの最中に見えた幻かとも思ったが、違うらしい。
猗窩座と煉獄の体の中が炭治郎には透けて見えている。
言わば、これは『透き通る世界』。
僅かな動きで生じる筋肉の緩みですら、その世界の視界でなら捉えられる。
この時、炭治郎の視界に変化が起きててきていたことに、まだ誰も気づいていなかった。
だが、変化が起きていたのは炭治郎だけでは無かった。
猗窩座の猛攻を必死に捌きながら、煉獄もまた強者との戦いに。
すれすれの命のやり取りに心が揺れた。
だが、これは喜びでも、悲観でもない。