第70章 氷中の激情
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「ゴフっ……!!」
「白藤!?どうした!?」
隣で走っていた白藤が急に立ち止まり、吐血した。
まさか、鬼の奇襲かとも思ったが、次の攻撃も無い。
それに……
「今、藤の紋様がお前の額に出たが……何か関係があるのか?」
「藤の紋様ですか?」
自覚がなかったのか、白藤が額に手を伸ばす。
「今は出ていない」
「………そうですか」
「……白藤。今の術を発動中止にしないか?」
「義勇さん?」
「確かにお前の術は使えないかもしれない、だが皆死と隣り合わせなのは一緒だ。お前だけが背負わずとも……」
「義勇さん……これは私が望んだ術です。だから、大丈夫です」
その瞳に映る強い意志の光に、義勇は負けた。
「そうか。だが、無理はするなよ」
「はい」
再び、義勇と白藤は走り始めた。