第69章 向かう先に
珠世の奇襲で無惨の隙は生まれたが、これ以上の畳み掛けを出来ず柱達も手をこまねいていた。
「鬼を人に戻す薬?そんな大仰なものが作れるはずがないだろう!」
「信じられないのも、無理はありません。私一人では成し遂げられなかった。状況が随分変わったのです!」
掴みあっているのは鬼同士。
だからこそ、無事なのだ。
お互い傷だらけの問答など、人間には出来はしない。
この状況から無惨を逃がすつもりは毛頭無いが、追撃しようにも結晶に刺されば怪我もする。
白藤の藤露も連続して使えない。
となれば、攻め手をあぐねてしまうのもやむ無しという意味である。