第69章 向かう先に
ベン、ベベン!!
琵琶の音が再度響く。
無惨の後方に一人の男が現れる。
無限城から出てきたということはアイツも鬼……
無惨を仕留めに行った冨岡と煉獄の意識がほんの一瞬ズレる。
無惨はそれを見逃さなかった。
双方の技を受け、結晶を削り、無惨は数本の結晶を取り込んだまま、体の自由を取り戻す。
「無惨が、あの包囲から抜け出しやがった!!」
宇髄の驚きにも頷ける。
まさか、あの状態から動けるようになるとは思っていなかった。
だが、それも計算の内だった様に、静かに無惨に迫った者がいた。
グサッ。
「っ……」
無惨の懐に刃を突き立てたのは、意外な人物だった。
「……珠、世…」
目眩しの術を使って私に近づいて来たのか!?
「今、お前に注射したのは、鬼が人に戻る薬よ。お前が無力化できるなら、私は何だってやってやるわ……」
「珠世様……」
「お前は前に出るな、白藤」
「ですが、宇髄様」