第69章 向かう先に
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産屋敷本邸の異変に気づいたのは、使いに本邸に来ていた鎹鴉の要である。
本邸につめている紫苑が要に会った際、普段なら必ず声をかけてくるものが、今回はなかった。
だからこそ、要は煉獄の屋敷に戻ってから産屋敷本邸に向かえと杏寿郎と槇寿郎に声をかけたのである。
「カァー、杏寿郎!産屋敷、向カエ!父モ来イ!」
「俺もか?御館様に何かお有りだったのか?」
「紫苑、変!本邸デ、何カアッタ!今スグ向カウ!」
「うむ、分かった!父上!」
「あぁ、行くぞ。杏寿郎!」
衣装を整え、帯刀する。
杏寿郎は隊服に炎柱の羽織。
槇寿郎は着崩れの少ない羽織袴姿。
羽織は袴の黒が映える臙脂色である。