第69章 向かう先に
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一方で、白藤は御館様の自室の前にいた。
病の進行具合では、私の力は及ばないかもしれない。
いけない、最悪ばかり考えてしまう。
白藤は悪い思考を振りほどくつもりで自分の頬を両手で叩いた。
「耀哉様、失礼します……」
しばらく待ったが、応(いら)えはない。
すると……
「どうぞ」
中から女性の声がした。
隠の隊員だろうか?
少々疑問を抱きながらも、扉を開いた白藤は驚いた。
そこには、白衣を着た女性がいたからだ。
「………どなた様ですか?」
美しい女性は白藤に向かい、頭を下げる。
「白藤様ですね。私は珠世。鬼の身でありながらも医者を務めています」