第69章 向かう先に
ハッタリか?
もし本当なら御館様はどうなって……
「悪いが私も部下を沢山失ってね……忌々しいあの子供……竈門炭治郎に関わる人間を私は殺す」
距離を詰めてくる鬼舞辻に対して冨岡は動けない。
気圧されてしまっているからだ。
だが、冨岡も止まってばかりではいない。
動け!
心の内で己を奮い立たせる。
鬼舞辻は鬼の始祖。
蔦子姉さんを、錆兎を、殺した……
言わば、宿敵。
「返せ……」
振り絞った声は、聞いたことがないほど掠れていた。
「姉を……朋友(とも)を、返せ…… 」
「………人間は皆、同じ事しか言えないのか?……とうに死んだ人間を、返せるはずが無いだろう!」
「鬼舞辻、貴様!」
怒りで拳が震えた。
そうだ、それでいい。
動くんだ!
動いて、あまね様を鬼舞辻から遠ざける!