第69章 向かう先に
誰なのかは分からない。
冨岡は初めて会ったその鬼を前にして格が違うと肌で認識した。
この気迫に、存在感……
少しでも動けば、あまね様諸共切り刻まれてしまうのではないかと思うほどに……
声すら発せない緊張感の中で、義勇は思考を巡らせる。
何か、きっかけがあれば……
冨岡は目の前の男を具(つぶさ)に観察した。
血のように赤い瞳。
白白とした肌。
闇夜を思わせる黒髪。
巷で優男と呼ばれそうなほど整った顔をしたその男は、こちらに視線を向けるなり口を開いた。
「貴様は柱か?」
短い問いだ。
だがそれに答えて何になる……
「何だ?鬼殺隊は口も聞けぬのか?」
「っ………!!」
コイツ、こちらの内情をどこまで知っている!?
「くく。まぁ良い。今私は気分が良いんだ。自己紹介をしてあげよう。私の名は『鬼舞辻無惨』だ」
鬼舞辻?
コイツが?