第69章 向かう先に
「冨岡様。お茶を」
「すみません、頂きます……」
話をするのが苦手な冨岡は自分から話を振ることが出来ず、結局静かにお茶を啜るだけに留まった。
「冨岡様は、痣は出現されましたか?」
『痣』
確かに、痣が出現すれば今よりも強くなれる。
だが……
今代の柱の中で痣が出現した話を聞いたのは甘露寺と時透のみ。
柱稽古後で他にも痣が出現したという話は聞いていなかったはずだが……
「すみ……」
「……お逃げ下さい」
「あまね様?」
「いけないね、産屋敷あまね」
「お前は……」
気配なく現れた黒服の男。
その男に会うのは初めてのはずなのに、気配が異質で。
人とは違う。
この男は鬼だ。