第69章 向かう先に
「白藤のみお通しせよとの命である……」
「冨岡様には私からお話がございます」
「「あまね様」」
珍しい。
あまね様がお呼びする前に表に出てこられるとは……
「白藤様。どうか耀哉様を……」
あぁ、そうか。
あまね様は私に施術を望んでいるのか。
「……お部屋に伺います」
二つ返事で頷くことはできない。
御館様の様子を見ない限りは……
ざわつく胸中を悟られぬように、白藤は耀哉の元へ向かう。
こうして、冨岡はあまねの案内で客間へ足を向けた。
あまねから御館様の容態を聞いた冨岡は今すぐに馳せ参じたい気持ちを抑え、白藤に任せることにする。
実際、彼女以外に回復に特化した人物が居ない時点で己のできることは限られているのだと……
こういう時、人である非力さに辟易する。