第69章 向かう先に
そうして、先に我に立ち返ったのは、意外にも杏寿郎だった。
「二人はこれからどうするんだ?」
少々無理やりではあるが、杏寿郎なりに話題を提供しようとした結果の質問である。
「本部に向かおうと思います。御館様にお目通り願えるかは、分かりませんが………」
病の進行が酷くなってきている御館様と直に話ができるのは、白藤くらいである。
実際に対面出来るかは些か難しいだろうが……
「そうだな。それが一番いいだろう。要に先だって知らせてもらうがいい。杏寿郎、要に言伝を」
「分かりました!」
何故か張りきる様子の杏寿郎と、それを笑顔で見守る千寿郎を見て、冨岡は首を傾げた。
「では、義勇さん。参りましょうか」
「おい、いいのか?」
槇寿郎に非礼を侘びたい冨岡は白藤に声をかけるも……
彼女の圧のある笑顔で乗り切られてしまった。
彼女なりに槇寿郎に発破をかけたつもりなのだろうか……