第67章 澱(おり)の中で$
そろそろ夜明けが近いが、服を着るのも惜しい気がする。
冷めてしまったが、湯桶もあるので、とりあえずは体を清めようと体を起こす。
『魅了』の効果も薄れたのか冨岡も普通に起き上がれるようになった。
手拭いを廊下に置いたままにしてしまったと縁側沿いの襖をほんの少し開くと、いつ頃用意されたのか着替え用の着物と新しい手拭いが用意されていた。
俺たち二人に気づかれずここに用意出来るのは槇寿郎しか居ないと白藤に言われ、冨岡は何とも言えない気持ちになった。
急いで冨岡が先に着替え、白藤の分の着替えを部屋に運ぶ。
「ふふ」
「どうした?」
「まさか、義勇さんが杏寿郎様のお着物を。新鮮でございます」
冨岡が着ているのは杏寿郎の物で珍しく寒色系の色合いのもの。
浅葱色の着物を纏う冨岡が何ともお似合いだ。